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(朝日新聞「天声人語」より)
索 引


『朝日新聞』1976.09.15 「天声人語」


・テレビドラマ『となりの芝生』で姑(しゅうとめ)役を演じた女優の沢村貞子さんが「いい姑になる秘法は」と30代の女性に問われ、「一日も早く精神的に子離れすること、そのために今から自分のやりたいことを探すこと。自分も嫁もお互いに欠点だらけの哀れな動物だと知ること」と答えている。
・この「自分のやりたいことを探す」という点では、フランスの作家ボーボワールもまた、その著『老い』の中で同じような発言をしている。老人が敗北に身をまかせないためには、ただ一つの方法しかない。それは、「われわれの人生に意義をあたえるような目的を追求し続けることである。」

老いてなお、情熱を燃やし続けた人の例は少なくない。晩年のルノワールは半身不随の状態のまま絵をかき続けたし、バートランド・ラッセルが核兵器反対のデモですわりこんだりして禁固刑をうけたのは89歳の時だった。
・アメリカでは、65歳でタイプを習い、77歳で車の運転を習い、88歳の時舟でアマゾン川をさかのぼり、99歳で農地の開拓に着手したという婦人がいるし、75歳の時から細密画を習い始め百歳の時にすばらしい作品を描き上げた女性もいる。
・最近の本紙家庭欄にも、52歳の時に料理店の下働きに出はじめ、やがて有名な料理店の支配人になった婦人の話や、テキサスの広大な農場を切り回す75歳のおばあさんの話がでていた。私たちの周辺でも、一つの道にうちこんだ労職人の若々しさに驚かされることがある。
・しかし情熱のもてる仕事に恵まれた老人は、おそらく少数派だろう。ボーボワールの言うように、大多数の人は老いを悲しみと憤りをもって迎えざるをえない。
・ある団体が「敬老の日」のため、木彫りなどの老人の手作りの作品即売会を企画したら大好評だったという。お年寄りの仕事を生みだすため、ひとつの小さな提案をしたい。老人の手工芸品を売る専門店やデパートの常設売り場が各地にできないものか。そこでは、制作も運営もすべて老人にまかせるのだ。//