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 初心者用のコンテンツとして,過去の「読書会(ラッセルを読む会)のメモ(or レジメ)(ただし松下のもののみ)を,今後電子化していきます。資料整理の一貫で,電子化して不要の資料を廃棄したいためでもあります。
 メモ程度のものが多く,余り参考にならないかもしれませんが,ラッセル初心者の方には,特に未読のラッセルの著書については,多少参考になると思われます。



(第1回)読書会メモ(1980.01.20)

[テキスト]ラッセル(著),堀秀彦(訳)『幸福論』(角川文庫版/原著:The Conquest of Happiness, 1930)

(注)不適切な訳があるかもしれませんが,当時の,ほぼ堀秀彦(訳)のままにしてあります。

第1部:不幸の原因

 本書のとりあつかう範囲
 ・普通の,毎日みうけられる不幸,言いかえれば,今日の文明国に生きている過半の人々が苦しんでいるところの,そして又,その明白な,外部的な原因がないために,どうにも避けようがなく,それだけ一層たえがたいものであるところの不幸に対して,一つの療法(処方箋)を示す。
 ・この世には,一人一人の個人の力の範囲内にある,いろいろな事柄があるものであり,私がこれから示そうとするものは,普通程度の好運さえ恵まれていれば,それによって幸福がえられるような,'心の改革'にほかならない。幸福を増進するために必要な'社会組織の改革'については,本書の目的ではない。(注:それらの問題については,たとえば,ラッセル『教育と社会制度』参照)

 1.バイロン風の不幸
 ・彼らの(自らの)悲しみを,きまじめに,宇宙についての彼らの見解のせいにしている人々は,馬車馬の前に車をおく,前後転倒の徒である。・・・。私は今までもたびたび,全てが空の空なるものだと感ずるような気分を経験している。ところで,私がそういう気分から脱出したのは,何らかの哲学思想によってではなく,かえって,どうでもしないではすますことの出来ない,'行動の必要'からであった。
 未来を常に待ち望み,現在のもつ一切の意味は,現在がやがてもたらすであろうところのもののうちにあるのだと考える習慣,これは,一つの'有害な習慣'にほかならない。

 2.競争
 ・'成功'は幸福の一つの要素になりうる。けれども,もし,他のあらゆる要素が成功を獲得するために犠牲にされたとしたら,成功の値いは余りに高価となり過ぎる。・・・。'禍いの根源'は,他人との競争上の成功を幸福の主たる源泉として余りにも強調し過ぎることに由来する。
 経済的成功(おかね): For my part, the thing that I would wish to obtain from money would be leisure with security. (leisure with security 安全性を伴った閑暇(時間))

 3.退屈と興奮
の画像  ・少なくとも人類の罪悪の半分は,退屈を恐れる余り犯されたものである(例:魔女狩り)
 ・幸福な生活にとって必要なことは,'退屈に耐える'という,ある程度の力である。・・・。多少とも単調な生活に耐え得るという能力こそ,幼年時代に獲得されるべきものであり,この点で,今日の両親は大いに非難されなければならない。現代の親は子供に'受動的な楽しみ'を与え過ぎる。子供の快楽というものは,大体において,子供がみずからある程度の努力と創意によって,その環境のなかから取り出すべきものである。

 4.疲労(特に,神経的−)
 ・正当な時に物事を考える癖をつけることが大事。・・・。_始終,朝から晩まで下手に考えるよりも,困難な,あるいは心配せすにはおれないような,決断を下ささるえないような揚合,そのための一切の材料が利用可能となるや否や,諸君はその問題を最も考えぬき,そして決断を下すといい。
 ・いかなる種類の恐怖も全て,それを見つめないことによって余計にひどくなる。考えを別のことにそらそうとする努力は,それを見つめまいとする幽霊の恐ろしさに貢ぎ物をすることに他ならない。

 5.ねたみ
 ・嫉妬(しっと)は一歳になるかならないかの幼児のうちに充分見受けられるものであり,しかも,全ての教育者によって最も優しい敬意のもとに取りあつかわれているものである。
 ・羨望・嫉妬こそ,デモクラシーの基礎である。
 ・嫉妬:彼は自分の持っているものから楽しみを取り出すかわりに,他人の持っているものから苦しみを取り出す。だが,幸いなことに,人間性のなかにはこれを償ってくれる感情,言いかえれば,他人を賞賛したいという感情がそなわっている。
  比較の形で物事を考える習慣は一つの致命的なものだ。・・・。全て,こうしたこと に対する適切な療法は精神の訓練,つまり,余計なことを考えないという習慣である。
 ・現代人は,かつて彼の精神 Mind を拡大したごとく,いまや彼の心 Heart を拡大しなければならない。

 6.罪悪感
 ・良心の呵責,悔い改め,露見しないかという恐怖,仲間たちからのけ者にされはしまいかという恐怖,等々・・・。
 ・その最も重要な形式における罪悪感は,その根源を無意識的なもののうちにもつところのものであり,・・・それは'幼児期における母親の道徳上の教え(しつけ)'に根拠をもっているものである。

 7.被害妄想
 ・被害妄想は,いつも自分自身の美点・長所を余りにも誇張して考えることにその根源を持っている。
 四つの一般的教訓
  1. 諸君の動機が,諸君にそう映ずるほど,常に他人本位のものであるわけではない,ということを忘れるな。
  2. 諸君の功労を過大評価するな。
  3. 諸君が諸君自身に対して関心を持っているのと同じように,他人が諸君のことにそれほど関心を持ってくれるなどと決して期待するな。
  4. 大半の人が諸君を迫害してみたいと思うほど,諸君のことを考えているなどとかりそめにも空想するな。

 8.世論に対する恐怖
 ・(近代社会においては)さまざまな見解の相違のために,任意の趣味と信念をもったある一人の人間は,ある派閥のなかで生活している時は,事実上,人間のクズみたいに自分のことを考えるのに,他の一派のなかにあっては,彼はまったく正常な人間として受けいれられる。
 ・故意に世論を軽蔑する必要は毛頭ない。・・・。だが,そうではなくして,本当に世論に対して無関心でいることは,まさに,一つの力であり,かつ幸福の源泉である。  
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