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牧野力「ラッセルは生きている?」
『ラッセル協会会報』v.20(1972年1月刊)pp.15-16.

* (故)牧野力氏は当時、早稲田大学政経学部教授、ラッセル協会常任理事


 先日(1971年末頃)古本屋街でバッタリ文部省の教科書調査官R氏に会った。喫茶店で、挨拶がすむと、(発売当時)定価二円五〇銭のラッセルの Education and the Social Order, 1932の訳書(『教育と社会体制』)を出した。そして、熱ッぽく、その中の一頁を私に指した。
……究極性を否定する心は科学的精神の粋である。(Absence of finality is of the esssence of the scientific spirit.)・・・・・・経験の世界においては絶対ということを排除せねばならないという強い態度が出てくるのである,…(同書p.262)
 彼は別にラッセル研究家ではない。フト、書棚に、『教育…』」という訳書を発見し、仕事熱心から、手にしたところ、「あとがき」の中のこの引用文にひどく共鳴し、これから、ラッセルの教育論を読もうと、購入したのだった。
 ある一つの既成概念しか認めたがらない保守的で閉鎖的な職場(中央官庁である文部省)に、新鮮な外気を入れようと換気通風作業に彼は努めている、という噂を耳にしていたので、「成る程」と微笑を禁じえなかった。
 幼児教育論が今日盛んである。現場の先生と中教審(中央教育審議会)とは対立的である。ラッセルの幼児教育論の精神がそれらの中に生きる日が来てほしいものである。