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牧野力「ラッセルの門をくぐるの弁」
『牧野ゼミナール(論集)』1973年度 p.1(巻頭の言葉)

* 牧野力氏(1909-1994)は当時、早稲田大学政経学部教授、ラッセル協会常任理事


『社会主義ヒューマニズム』の表紙画像  未来を背負う若人にラッセルの精読をすすめたい。
 何よりも彼は、知的誠実さを一生貫いた。気易く「絶対」とか「真理」とか言わない。信奉しないからである。
 教育は、合理的な懐疑精神の養成にあるという。(人間の非合理さを排除せずにいる。)彼は教条主義者ではない。教条主義は、若い創造性の芽をつむ敵である。ラッセルは彼の非や誤りを検証することをつねに求める。
 彼の手堅い立論は、先見性豊かな見解となり、後で、社会事象の中で現実と符号することが少なくない。人によっては、これ以上に、彼のヒューマニズムを高く評価するかも知れない。
 半世紀前(1920年)に、今(現在)の「人間の顔をした社会主義」に似た説を書いている。個性尊重と精神的な自由を基礎とし、目的と手段を分離対立させない。若人の精神の営み、訓練・創造に味方する必要条件は、これらを欠いては無意味となろう。(了)