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「ラッセルの言葉−幸福について−」まえがき

『ラッセルの言葉−幸福について−』(アマゾン・インターナショナル、2014年8月刊)「まえがき」からの転載です。


 まえがき

 ラッセルの一般向けの著作のなかで一番読まれているのが『幸福の獲得』(通称『幸福論』)、次に『西洋哲学史』,『哲学の諸問題』(通称『哲学入門』といった順番でしょうか?
 日本では,ラッセル,アラン,ヒルティの『幸福論』を,出版社が?勝手に世界の3大幸福論と称していますが,英米はじめとした英語圏とドイツやフランスを中心としたヨーロッパ圏とでは大分事情が異なるような気がします。たとえば,哲学に関していえば,日本ではドイツやフランス哲学が人気があり,書店では独仏系の思想関係の図書があふれています。しかし,英米においては,哲学といえば通常分析哲学のことを言い,大学のテキストの70%以上が分析哲学関係とのことです。英米においては,哲学をやる学生は数学ができる人が多く,日本のように哲学をやっている学生の大部分が数学ができないという状況とはずいぶん異なっています。

 『幸福論』は,自分にあったものを読めばよいと思われます。「3大幸福論」のうち,どれが一番すぐれているか比較しても仕方がない面があります。宗教的かつ感傷的な幸福論を望まれるのならヒルティのもの(ページ数が多い!)がよいでしょうし,フランスのこじゃれた感じがよい人はアランがよいかも知れません。最近はどういうわけか(来年2015年がアランの『幸福論』出版90年にあたるため?),アランに関するものが非常にたくさんだされています。

 しかし,人間の不幸は考え方しだいでほとんど解消される,気の持ち方でたいていなんとかなる,といったアドバイスに納得しない読者は是非,ラッセルの『幸福論』をお読みになることをお薦めします。ラッセルの幸福論の原題は The Conquest of Happiness (幸福の獲得:努力して幸福を獲得すること)です。ラッセルにとって,幸福は棚からボタ餅のように落ちてくるようなものではなく,残念ながら,大部分の人間にとって,努力して勝ち取るしかないものです。たとえば,宝くじで3億円当たれば幸福になれると言うものではありません。

 すでにラッセルの『幸福論』をお読みになっている方は,本書をざっと読んでいただいた上で,本書に採録された100件以上のラッセルの言葉(日本語と英語)の出典及びより詳細な情報が掲載されたラッセルのポータルサイトへのリンク(URL)をたどり,ラッセルの幅広い思想にふれていただければ幸いです。
(ラッセルのポータルサイトには約7,000のコンテンツが掲載されています。
  http://russell-j.com/index.htm )

 「ラッセルの言葉」シリーズ刊行の主な目的は次の3つです。
  1. ラッセル思想の理解に役立つラッセルの発言をラッセルの多数の著書から抜粋し,幅広い読者に提供すること
  2. ラッセルの著作(単行本や論文等のまとまったもの)の日本語訳を提供すること
  3. 誤訳や不適切な訳を指摘していただき,バートランド・ラッセルのポータルサイトに掲載してあるラッセル関係のコンテンツを修正・改定し,よりよいものにしていくこと
 ご活用をよろしくお願いいたします。 (松下彰良)