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学会インフォーメーション - 日本バートランド・ラッセル協会

* 出典:『理想』1980年6月号pp.125-126

〔設立総会〕


ラッセル協会会報_創刊号
 昭和四十年一月二十一日、早稲田大学大隈会館において、(故)笠信太郎先生を会長に創立総会を盛大に挙行しました。関西からも駆けつけられ、特に、岩松繁俊(長崎大)教授が九州から上京され、一同感激しました。総会に先立ち、八回、規約その他の検討審議を行いました。毎回、茅ケ崎の御宅から、痛風に苦しむ脚をいたわり出席される会長の熱意に一同ひとしく感激しました。先生を会長に推すに至った世話人一同の胸中にはラッセル卿御夫妻を朝日新聞丸抱えで日本にお招きすることに尽力された先生の意気に共感と感謝の気持があったからと思います。[英本国における核禁運動の事情で、折角の先生の企画は実現しませんでした。〕

〔設立趣旨〕

 協会の規約、経過報告、世話人・役員及び会員名簿・その他についてのインフォメーションは、次に述べる、「協会会報」に詳細掲載されていますが、協会の性格や目的にふれる点だけ次に記します。
 「バートランド・ラッセルの思想の研究・理解・普及を目的とし、あわせて世界の平和、および、人類の幸福に貢献しようとする・・・。本会は学会であって、直接の政治活動を行なわないものとする。」[規約第二条〕
 この条項は、吉野源三郎委員長と久野収理事との「ラッセル平和財団」日本支部が発足されたことを配慮し、再三検討した結果でした。

〔会長のことば〕


ラッセル関係電子書籍一覧
 研究・理解・普及を目的とする協会の設立趣旨は次のことばで更に明らかになりましょう。
 「根本的に私がラッセルに興味をおぼえたのは、その考え方、その一つの型といったものです。(中略)ラッセルの世界は、何と言っても、現代二十世紀の頂点に立っていると考えてよろしいのではないか。それが私の素人考えであります。私どもは、ヘーゲルやマルクスの世界のように、造りあげられた金殿玉楼の世界に招じ入れられるものではありません。・・・。ただ私としては、この辺に、現代の哲学者であり、思想家としてのラッセルを高く評価せざるをえない理由をもつものであります。・・・。一つ、お互いに、ラッセルを学びながら、私ども自身の世界を作ってゆくことにはげみたいものであります。ここに集まられた方々が、それぞれ少しずつ違った「自分の世界」をお互いに語り合うことによって、いくらか一つの世界に近づくことになれば、ラッセル的方法にかなうものであろうし、それがまたデモクラシー的態度でもあろうかと考える次第であります。・・・。」
 従って、当協会は、唯の学者・先生だけの団体でなく、学生・主婦・会社員・退職年配者など社会の広い層のつどいとして発足しました。「入会の言葉」や「会友だより」からもわかります。
 笠先生が亡くなられて、ラッセルの存命中親しく文通のあった谷川徹三先生が会長に就任して下さり、今日に及んでいます。

〔協会活動〕


ラッセル英単語・熟語1500
 (イ)公開講演会〔朝日講堂にて〕
  規約の示す「理解と普及」を計り、毎年、五月十八日のラッセル卿の誕生日を記念して、講演を開催。〔講堂の無料使用を十余年許与された朝日新聞社の深い御理解と御協力に感謝しています。〕
 (ロ)規約の「ラッセル思想の研究」の成果を、より広い層に分かち合うため、斯界の専門学者に、年一・二回の割でアカデミックな研究発表をして頂いた。その中で第一回研究発表会「ラッセルの論理」(沢田允茂先生)と第四回研究発表会「ラッセルと哲学の方法」(吉田夏彦先生)の分は、研究パンフレット・シリーズとしてそれぞれ発刊しました。
 (ハ)協会会報の発行
 「普及」と会員相互の交流親睦の機関誌を、講演会と研究発表会の開催後に、発行しました。〔創刊号(40・5・18)より創立十周年記念第23号(50・5・1)まで続刊〕 同会報には、著書解題・研究論文・一般投稿・その他各種資料が掲載されています。

〔現況〕


ラッセル著書解題
 日本人の飽きっぽい移り気の人が少なくないせいか、インフレ攻勢に抗しえなかったせいか、世代の交代が現われたせいか、時代の波をかぶったせいか、ラッセル卿の死を境に、それらが顕在化しました。五百円也の年会費では、会の運営も困難となり、昨今は、研究家や卒業論文執筆学生への資料提供が主となっています。地道な潜在的研究家のエネルギーとの交代期に入った観があります。〔目下、事務局は近く変更予定です。〕
 「ラッセルを読む会」が二十代の若者の間で東京の一角に弧弧の声をあげ、ささやかながら活動しています。バトンタッチの日の早く訪れるのを期待しています。日本で、個人として最も充実した資料を揃えもつ 松下彰良 君〔=連絡先:(夜間)〇三-三三三-九一六九(注: 昔の電話番号)〕が中心になっています。(牧野力)